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“Bimbi Belli” 映画祭 by ナンニ・モレッティ
ローマの夏の催しのひとつに、“Bimbi Belli”映画祭というものがあります。
「はて?ローマに映画祭などあったかしら?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
小さな、そしてとても愛らしい映画祭です。
会場は、トラステヴェレ地区の映画館 “Nuovo Sacher“
イタリア映画界を代表する監督、ナンニ・モレッティ氏が手がける映画学校
の中にある野外映画館がその会場です。
7月の初旬から後半にかけて、毎晩1作品、これから羽ばたいていくであろう
若き監督の作品が上映され、上映後に、ナンニ・モレッティ監督との
トークショー(インタビュー)が行われます。
トークショーは、監督同士だけでなく、もちろん一般の観客も参加でき、
映画の感想や、「この場面は一体どうしてこんな風にしたのか」などといった質問、
映画を観た直後の新鮮な想いを直接監督にぶつけることができます。
昨夜私が見たのは、『Texas』という100分ほどの作品。
イタリア・ピエモンテ州の小さな村を舞台に、
若者たちの青春や苦悩、および現代のイタリアが抱える問題をコミカルに、
少し変わったストーリー展開で描かれた作品でした。
監督は、若干31歳のファウスト・パラヴィディーノ氏。
映画上映後、ジーンズにT-シャツ姿といったラフないでたちで登場した監督は、
“映画“としては、これが初作品と、
少年のようにきらきらと瞳を輝かせ、夢に溢れた非常に良い表情をしていました。
微笑ましかったのは、これから様々な機会や舞台で報道陣から質問を受けるであろう若き監督に、
モレッティ監督は、応えるときには観客の方を向くようそれとなく仕向けたり、
彼らの個性や作品にかけた思いを引き出すような質問を投げかけたりして、
インタビューはまるで、師匠が弟子に何かを伝授しているような場にも思われました。
観客からの質問も、「今後もしも、こういった批評が出てきたらどう向き合うかね」とか、
「ここの展開が非常に面白く、今後も期待している」
など、終始見守る愛情が感じられました。
この“Bimbi Belli ”映画祭は、モレッティ監督が
「自分は幸いにもたまたま若くして世界で認めてもらえる機会を得た。
だから、そんな機会がこれからの若い監督たちにも訪れるように、
そして、これからもイタリア映画界が発展していくよう後輩たちの力になってゆきたい」
そんな思いをこめて始めたのだそうです。
“Bimbi Belli(ビンビ・ベッリ)”とは、そのまま訳せば“可愛い子供たち”、
そんな若き監督たち、また彼らの作品を指すのでしょう。
インタビューが終了すると、皆席を立ち、
「この場面は意味不明だった」「この場面は良かった」「これからも頑張ってくれ」
などと、観客ひとりひとりが監督の前で感想や賛辞を述べ、
監督もそれにひとつひとつ丁寧に答え、握手をし、幕が閉じてゆきました。
モレッティ監督を目にするのは、この夜が初めてだった私。
「非常に素朴な感じの方」と感想をもらすと、
モレッティ監督の近所に住んでいるという友人は、「紹介するよ」などと気軽なことを言い、
「やぁ、ナンニ」と声をかけ、
監督も、「やぁ、来てくれたの」と笑顔で応じていました。
インタビュー進行で少し汗ばみ疲れた様子の監督は、
ファウスト氏を囲む観衆の渦から上手に身を引き、
代表作『親愛なる日記』で、自らが乗っていた小さな緑色のスクーターにまたがり、
去っていったのでした。
なぜか、幼い頃に観た映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の
アルフレードとトトの様子が心に浮かんだ私。
ローマの街角で、古き良きイタリアに出会ったような気がしました。



